ボケは老化と一緒で長く生きれば生きるほど避けられないものです。
ならば、理想の老後を描くように、
理想のボケ後を描いてその実現にまい進することが、ボケ対策の基本
だと思います。別に自虐的になっているわけではありません。泣いても笑っても一度っきりの人生です。避けて通れないものがあることくらいとっくに経験済みの皆さんでしょうから、うまく通過する方法を模索した方がベターな場合もご承知でしょう。以下は、私が描く理想のボケ後とそこに至る理想の道程です。勿論、理想の老後にも応用できます。
私の理想には、すでにそれを実現した実在の人物がいました。私の祖父です。孫である私の顔を忘れ、娘である私の母を忘れ、やがて妻である祖母を忘れましたが、忘れなかったものがあったのです。性格です。人見知りで寡黙な祖父でしたが、口を開くと周囲を笑わせるというユーモアのセンス抜群の明治男は、ボケて寝たきりになった後に入所した老人ホームで、毎日周囲を笑わせていたそうです。祖母は呆れ顔でその話をしていましたが、私には、まさに悟りの瞬間でした。「オジイ、ありがとうね!」
あなたなら、ボケて寝たきりになるのと死ぬのとどちらを選びますか?皆さんにアンケートをするまでも無く、結果は容易に想像できますが、死ぬとしたならボケも寝たきりも無縁の今しかないでしょう。ボケと寝たきりのどちらかが現実になった時点で、自殺することが容易ではなくなりますからね。でも、自殺はハズレですよ。当たりは天寿を全うすることです。どんな終わり方をしようと。「天上天下、唯我独尊」です。「自分ほど大切なものは天にも地にもない」という意味ではありませんので誤解の無いように。「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」という意味です。あなたはひとりしかいないので、それだけで他の何ものにも劣らない存在価値があるものなのです。それを自分の人生で実証してください。それはあなたの人生の中で死ぬまで終わらない宿題です。やるっきゃないのです。
判りづらいですか?それでは反面教師を出しましょう。私の父です。父は御歳(おんとし)77 歳、かつてはタクシーの運転手もしていましたが、知り尽くしているはずの那覇市の道をあっさり忘れてしまいました。あまりにも突然の出来事だったようで、自分がどこにいるかわからないという電話を父からもらったときには、私も脳内出血だと即断してしまうほどでした。電話の向こうで動揺を見せまいとする父に倣い、息子の私も淡々と 帰ってくる方法を伝授しました。交差点の道路案内やバス停の停留所名を確認させ、前後左右どちらへ向かえば良いのかを指示したのです。自宅近くの地理はまだ覚えていたのでそのときは何とか帰宅できましたが、本人も私もかなりショックを受けました。病院で精密検査をしてもらいましたが病気ではありませんでした。
しかし、病気ではないと知ったその日から、父は自分がボケ始めていると認識しました。と同時に落ち込んでしまいました。自宅に引きこもり、口数は少なくなり、つまり脳みそを今まで以上には使わなくなってしまったのです。その結果は明白です。使わない部分は退化するのが人間の体です。当然ながらボケは進行していきました。その現実を受け入れられない父は、ますます落ち込み今やウツ状態です。頭のいい人なので人一倍考え込み、結果日々落ち込んでいるのでしょう。
こんな悪循環を断ち切るために、人は人生の幕引きを自分でやるべきでしょうか?それが最善策でしょうか?「自殺」に対する倫理観と他人(家族)に迷惑をかけてはいけないという倫理観のどちらを優先させるかで、多くの方は判断されることでしょう。しかし、ボケてきたあなたに自殺してほしいと願う家族であったとしてもなかったとしても、やがてはボケていく家族のために、失うばかりの人生最善の終え方は「自殺」であると身をもって示したくはないでしょう。ならば、自殺以外の選択肢を探しましょう。
そのために、ボケ対策の基本を確認しておきましょう。完全にボケてしまうまでは「理想のボケた自分」づくりに精進してください。完全にボケたら追い求めた理想を実践することを信じてボケた自分に託してください。祖父の例は好例ですが、植物人間のようなボケ老人になっていたとしても、あなたに関わる方々の人生で重要な役回りをやっているのだと認識してください。実際誰もが他人の人生でいろいろな役回りを果たしています。悪人、厄介者といわれる人々も含め例外者はいません。
このサイトは、実のところ父のために構築しました。ボケと闘う父に、直面する現実から逃げない術を祖父の例から学んで欲しいと願っています。癌と果敢に闘う術を教えてくれた父を尊敬していますので、父の人生が、私にも私の子供らにも貴重な先人の知恵として受け継がれていくことを信じて疑いません。
子供もやがて同じ恐怖と闘いながら人生を歩む時期が来ます。
ですから、
先人であるあなたが勇気を出さなければ、子供らの恐怖が薄らぐことはありません。
頑張りましょう。
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