日本が自衛権を行使する具体的な相手
政治は現実問題に対処するために行われる国の活動なので、敵も具体的に想定されています。このことは、総理の言動からも明らかです。
日本が自衛権を行使するかもしれない相手は、中国、北朝鮮そしてテロリスト
です。
自衛権は武力攻撃を先に受けた国にのみ与えられる
自衛権について、国際連合憲章は第51条で「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定しているだけですから、
国連は定義すること無く自衛権を各国に容認
しています。また、自衛権を行使できる場合も「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合」と規定するだけですから、この要件から明確なことは、
武力攻撃を先に受けなければ自衛権は発生しない
というのみですので、
日本が先に手を出すことはない
という断言だけは信用できそうです。
発生した自衛権は、国連の介入で消滅する
上述の第51条で、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」と規定しているので、
自衛権は、単独でも集団でも国連が介入するまでしか行使できない
という解釈しか成り立ちません。しかし、問題があります。
常任理事国に対し国連が無力であることが2014年に勃発したウクライナ紛争で再確認
されたからです。つまり、
日本が自衛権を行使しても国連は介入できない可能性が高いので、自衛戦争が長期化する場合を想定しておく必要がある
ということです。
自衛権行使に必要な新三要件
1.我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
2.これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
3.必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
が新三要件と呼ばれているものですが、従来の三要件と内容は同じです。
新三要件の何が新しいのかといえば、「我が国と密接な関係にある他国」を含むと規定したことで、集団的自衛権の行使を日本も決めた
という点だけです。
新三要件は役に立つのか
自衛権を行使するために必要な要件は三つありますが、
現実には第一要件しか役に立たない
と思われます。
日本や友好国に武力攻撃があればただちに反撃する運用でなければ、殉職者をいたずらに増やすだけ
になってしまうからです。したがって、
友好国か否か、明白な危険の有無、国の存立と国民の権利を根底から覆す事態か否かのそれぞれの判断は、攻撃されている自衛隊が現場で即断する運用
になります。第二第三の要件も同じ運用にならざるを得ません。
暴漢に襲われとき、反撃が正当防衛に当たるか否かを考える余裕がないのと同じ理由
です。実際の運用予定でも
自衛隊が派遣される地域は非戦闘地域に限定されているので、想定される緊急事態は不意を突かれた攻撃のみ
しかありません。したがって、
即反撃しなければ全滅か降伏しかない
のです。
武力攻撃を受けたら反撃せずに逃げるという選択肢は、単発的な武力攻撃を受けた場合くらいにしか採用できませんので、この選択肢を第一に採用すべきという運用が強制された場合には、自衛隊は多くの犠牲を覚悟しなくてはなりません。
集団的自衛権の行使よりPKOで殉職者が続出する
集団的自衛権の問題は、友好国の起こした戦争に参加しないというものなので、友好国の戦闘部隊が全滅しそうになっても手を貸さないと明言したに等しい以上、戦闘で殉職者が出る想定は考えなくても良さそうです。手を貸さないことが本当にできるのかは大いに疑問ですが、答弁を信じるしかありません。しかし、
PKOでは新三要件の運用次第で多くの殉職者が出る
ことになります。
大規模な武力攻撃には歯が立たず、小規模な武力攻撃には反撃をためらうことが予想
されるからです。
相手がテロリストだと降伏もままなりませんから事態は一層深刻
になります。
「武力攻撃を受けたら、犠牲者を出さないためにありとあらゆる手段を使って全力を尽くせ」というルールが適用されないのであれば、自衛隊員の命はPKO参加国の中で最も軽いものとなるしかありません。
一方で、このルールを順守すれば、これが日本の未来になるのは確実ですが、
日本はPKOで中心的な役割を果たすまでになるでしょうから、派遣する自衛隊員の不足が少子化と合わせて問題になるのは避けられない
でしょう。
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